2020/4/8(水) 桐壺

※この記事は2020年4月9日にnoteで公開したものです。

 

昨日緊急事態宣言が発令された。首相や知事たちの無責任な答弁やクソみたいな演説を聞いていると、イライラしすぎておかしくなりそうである。正気を保つために、角田光代訳『源氏物語』を今日から毎日読むことにした。先月池袋のジュンク堂で、ボックス入りの全巻セットを買ってしまったのだ。あのときはこれが繁華街で遊べる最後の日だと思って、彼氏と『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』を観て、小籠包を食べ、ジュンク堂書店で本を買い込んだ。今、ほとんどの映画館は休業を余儀なくされ、飲食店も休業要請されるかどうかの曖昧な立場にいる。私はあれから地元のスーパーやドラッグストアでしか買い物をしていない。少し遠方に住んでいる彼氏とも会っていない。本当にあの日が最後になってしまった。本を読むしかない。

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源氏物語は、高校生のときに大学受験対策で『あさきゆめみし』を読んだので、あらすじだけは知っている。私は頭中将推しだった。ちょっと遊び人っぽいサブキャラが当時のマイブームだったのだ。

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今日は桐壺の章を読んだ。源氏が帝と桐壺更衣の間に生まれて元服するまでの話だ。

桐壺更衣は身分にそぐわないほどの寵愛を受けて周囲の反感を買い、おそらくそのストレスで早世してしまうのだが、帝はその辺りもうちょっと気遣ってやらなかったのだろうか。ハレムで誰か一人をあからさまに特別扱いしたらだめだろう。妻たちを平等に扱うことが一夫多妻制の要だ。自分の立場を忘れて猪突猛進してしまうのが恋ということなのだろうか。いや帝がそれじゃだめでしょ。帝若いのかな。なんにせよ、悲しみに暮れる桐壺の母親(シングルマザー)が不憫でならない。

帝がこっそり高麗人の人相見に源氏を見せるシーンに、鴻臚館が出てくる。鴻臚館というのは、当時の海外使節や留学生の宿泊所兼検問所なのだが、私はこの鴻臚館にちょっと思い入れがある。福岡旅行のときに訪れた、鴻臚館の遺構展示館が好きなのだ。福岡の街はどこも混んでいるが、なぜか福岡城には人がおらず、そばにある鴻臚館跡展示館も大抵ガラガラである。だからなのか学芸員が親切に色々と説明してくれる。鴻臚館では各国から集まった教養人たちが一緒に酒を飲んで漢詩を読み交わしたのだということもそこで知った。実際に源氏物語でも、人相見と源氏と右大弁が漢詩を作り合うシーンがある。本当にやってたんだ! 源氏が行った鴻臚館は福岡じゃなくて平安京だろうけど、でもなんかすごい。知識と物語がリンクする瞬間には何とも言えない喜びがある。

源氏は元服した際に左大臣の娘との結婚を勧められるのだが、「そういうことの恥ずかしい年頃である光君は、これといった返事もせずにいる」(p28)。えっ、そんな時期あったんだ。とにかく生まれたときから常人離れしている描写ばっかりなのに、そこだけは12歳っぽさを出すのか。その割には実母そっくりの藤壺に熱を上げているが。

しかし角田光代訳は読みやすい。登場人物の台詞がやたら長いことと和歌が差し挟まれること以外は現代小説と変わらない。これなら通読できるかな……?