『戦国鍋TV』レビュー①

ここ数日間ずっと『戦国鍋TVBlu-rayを観ている。全9枚のうち2枚目を観ている途中だが、すでに面白い。放送当時は白泉社系の漫画雑誌で特集が組まれるほど人気だったのも頷ける。というか、当時の『ザ・花とゆめ』に掲載されていた「信長と蘭丸」のグラビアと振付講座が見たい。どこかの図書館に保存されていないだろうか。

とりあえず、Mが出演していたコーナーを中心に感想を書いていくことにする。演技について偉そうに書いているが、素人の感想なので悪しからず。

SHICHIHON槍

 賤ケ岳の戦いで活躍した7人の武将で結成したグループ。おそらく元ネタは光GENJI。Mは三番槍・加藤嘉明(かーくん)役で出演。ピンクのスパンコールが全体についた衣装を着て槍を持って踊るのだが、このダンスがかなりレベルが高い。特に一番槍・福島正則(ふくくん)役の相葉裕樹の身体能力が飛び抜けている。ステップが軽やかすぎるし、キックしながらセンターに躍り出るところなどジャニーズアイドルも顔負けのレベルである。かーくんも槍をバトントワリングしながらウインクしたりする。かわいい。

SHICHIHON槍のMはなんだかあどけない。前髪があるせいなのか、最年少メンバーという設定だからなのか、随分幼く見える。「信長と蘭丸」の信長と同一人物にはとても見えない。これは演技力の為せる技なのか、それとも本当に若かったからなのだろうか。

かーくんはいち早くソロ写真集を出したり、カルピスが好きという理由で一人だけカルピスを用意してもらったりしている(他メンバーのドリンクはオレンジジュース)。役の中でもすでに抜きん出ている。かわいい。

かーくんは自分の宝物として松山城を挙げていた。変な声が出た。松山城って松平家のものじゃなかったっけ。調べてみると、建てたのは加藤嘉明、その後入った蒲生家が断絶、そして松平家が入城したらしい。そうだったのか!

松山城は私にとっても思い出深い城だ。初めての一人旅で四国を周っていたとき、松山に着いた途端突然発熱した。体温を測ると38度。松山に到着した途端に目に入ってきた松山城にわくわくしていたのに、どう考えても行ける体調ではない。松山城に見下ろされながら悔しい気持ちで風邪薬を買いに行った。かーくんは「松山城は勝山の上にあるっていうのも良い」と話していたが、そのおかげで松山城は街のどこからでも見えるのだ。幸い翌日には熱が下がり、松山城を目指したのだが、天守閣近くまでロープウェイがあるのに気づかず、病み上がりの身体で登山を決行してしまった。なかなかの無茶である。若かったなあ。考えてみれば、あの一人旅はちょうど『戦国鍋TV』が放送されていた時期と同じくらいかもしれない。偶然だけどちょっと嬉しい。

SHICHIHON槍で特筆すべきは五本槍・平野長泰(ひらくん)のキャラクターだろう。最初はグループの元気印だったひらくんは、回を重ねるごとに元気がなくなり迷走していくのだが、その原因はどうやら事務所やメンバーとの軋轢にあるらしいことが暗に示される。『戦国鍋TV』の面白さは史実をネタにしながら現代のコンテンツを戯画化して見せることにあると思うのだが、ひらくんの奇行はまさにその役割を担っている。『ミュージック・トゥナイト』はまずひらくん役・矢崎広の振り切った演技で人気を引き寄せたのではないか。

戦ハーフタイム

戦国時代の合戦の途中を運動部の「ハーフタイム」になぞらえ、更衣室に戻った武将たちが戦況を話し合い後半戦に備えるコント。毎回違う合戦・武将を、固定メンバーで演じる。コントの展開は固定化されているが、俳優の演じるキャラクターは毎回違い、その差がものすごく面白い。Mは武将メンバーなのだが、初回でチャラくてバカっぽい中川清秀役を演じたと思ったら2回目はクールで真面目な明智光秀役、3回目は自信のないヘタレな島津家久役を高めの声で演じている。ここでも変幻自在だ。何パターンものMが見られて最高である。

意外だったのが鈴之助だ。彼は背が高く存在感があるので、役が違ってもあまり印象は変わらないと思っていたのだが、いい意味で裏切られた。彼は存在感のボリュームを下げられるのだ。特に長篠の戦いでの奥平信昌役は、和気あいあいとした雰囲気を出すためなのか、他の俳優と横並びになるような演技をしているように見えた。俳優ってすごい!

戦国ヤンキー川中島学園

戦国鍋TVBlu-rayの一番最初に収録されていたコント。いきなり鈴之助武田信玄役として出てきたので「チェリまほの先輩!!」と叫んでしまった(心の中で)。タイトル通り川中島の合戦をヤンキー達の校内闘争に置き換えた内容で、『戦国炒飯TV』に登場した「信プレックス」をより深く理解するのに役立つ。シンゲンケンシン。

劇中、武田信玄山本勘助にキスするシーンが2回ほどあって驚いた。武田信玄の愛情表現、唐突かつ濃い。なんだか大河ドラマ風林火山』で武田信玄山本勘助が一緒にお風呂に入るシーンを思い出してしまった。どっちの信玄も高坂弾正に怒られそうである。

大坂ハイスクール 高校与太郎爆進ロード

川中島学園から一世代後、豊臣秀頼率いる大坂学園と徳川家康率いる江戸高校との戦いの物語。要は大阪冬の陣・夏の陣の話である。ゆとり世代の私はここで初めて「シャバい」「シャバ僧」という言葉を知った。世の中には知らない日本語がたくさんある。

バカリズム島津忠恒役で出演しているのだが、なぜか彼だけリアルなヤンキー感を醸し出していて少し怖かった。『架空OL日記』のときはあんなに銀行員に馴染んでいたのに……。

戦国武将がよく来るキャバクラ

知名度が低い戦国武将たちがキャバ嬢レイナに話を聞いてもらうというコント。今ではかなり有名な武将も多く来店している。10年間で戦国時代を元にしたコンテンツが増えたからだろう。数年前に大河ドラマになった黒田官兵衛も当時はこの枠だったと考えると、少し感慨深い。

このコントで注目すべきは、なんといってもレイナ役・柳沢ななの接客演技だ。客の自慢話を軽く受け流し、聞いているんだかいないんだかわからない態度を保ちながらも、適当なところで相槌を打って客の話を促したり中断させたりする。レイナがコント全体のリズムを握っているのだ。見ているとなんだか心地よくなってくる。これがキャバクラというものなのだろうか。行きたくなる人の気持ちが少しわかったような気がする。